2019年7月28日母島沖磯釣行 サワラ根

2021-11-18小笠原母島遠征


相変わらず時折思い出したようににイソンボがデットメアジについてくる。この様子だときっとどこかで彼らのやる気スイッチが入る瞬間があると思うし、その気にさせたい。磯上には留学生の美味しそうなお弁当の匂い。投げ続けているとわだかまっていた何かがスーッと抜けていく気がした。


ワタクシは寝坊したので弁当はなく、パンをかじりつつ釣りを継続。食べすぎなくて逆に良いのかもしれない。先輩が「パンはたくさんあるから食べても大丈夫ですよ」と声をかけて下さる。
ふとワタクシのメジャーを見た先輩。「あれ?測量用のリボンテープじゃないですか?」と。「記録的な魚を測るために沖磯ではこれを持参してます。自前ですよ(笑)」とワタクシ。釣具屋のメジャーは155センチまでものしか見つからなかったのである。加えて50キロまで測れるJGFA公認のハカリも持参している。この海では決してオーバーではない。フムフムと留学生。


そして今度は船着場に際に落としたデットメアジにガツンと当たりがあるも瞬殺。ハタ系か?今日はタイミングが合っていない。それでも時折見えるイソンボに惹かれてキャストをし続ける。後ろでは留学生が倒れるように寝ている。釣れないときに30分くらい仮眠を取るもの有効だが寝方が倒れたようだったのでちと焦った。

ワタクシはといえば南側に移り、スピニングタックル+マグナムミノーにアタリ。クンと入るので三発追合わせのちガツガツと来て下斜め方向に走り出す。これはイソンボか?ちらと見えた姿は先ほどから追尾していた魚体に似ていた。イソマグロなら40キロクラスだ。しかし良い引きであったがドラグを引き出しつつ走り30秒ほどでフックアウト。「何やってるんだーっ(笑)」、と笑いながらの先輩の声。


気づけはサワラ根には珍しく流れはほぼ止まっている。ついに時合が来たか。


先ほどのドラグ音でサポートに起きてきた留学生、他のメンバーも投げ始める。ワタクシはフック交換に船着き場に戻る。そして釣り再開。船着場を中位のGTがタンデムで横切る。留学生にそれを告げる。しかし魚にはスルーされる。南側に移動して投げ始める留学生。マイウェイ君と先輩は一休みして不調ぶりを話し合っている。「丸でつけたメアジを奪われました~」と言っている。食いが立ち始めたのだ。

そんな言葉を聞きつつタックルを用意していると視界の隅で留学生が何かを掛けて巻いている。順調にポンピングをして寄せていたがとふっとしゃがみこんで姿がみえなくなった。それを立ち上がって見た先輩が一拍おいて「デカイぞ!!」の声。留学生が掛けて引いてきた魚(アオチビキ?)に巨魚が食いついたのだ。急ぎ掛けつける。南側の磯の西際、潮が引いて普段海中のフラットな足場で座り込んで耐えている留学生。そのうち巨魚は北側へ回り始めた。

…。

はじめて母島沖磯に挑戦しての2日目の13時の同行者の敗北を思い出させる。ワタクシにはトラウマである。頭を振りネガティブに考えるのを止める。同礁したメンツに大物が掛かる時いつも思うのが

なんとしても獲らせたい。

綺麗事でなく大物を釣り上げる場にいるというのは歓喜であり自分が大物を釣り上げるのは狂喜である。

巨魚はサワラ根定番の北西側の瀬に周りきらずに再び南側へ走りはじめた。潮がほぼ止まっているので潮流に乗るランができずに自力で深めの所に向かって泳いでいるのだ。高速ではない、しかし重い走り。みるみるスプールが痩せていく。留学生はハンドドラクで一度ガチドメしようとするがのされてしまう。腰を下ろしているのにそのパワーで腰が持ち上がる。巨魚のパワーが留学生の力上回っているのだ。そこで断続的にハンドドラグをかける。圧の強弱は疲労を倍増させるのだ。
そして巨魚は200m以上ラインを出して止まった。すぐさま休まずにポンピングをして寄せ始める留学生。しかし断続的に巨魚はラインを出していく。時折ロッドが直線になってしまう。留学生ハンドドラグをしつつロッド直線気味にして対応。後ろでは先輩が「これぞビッグゲームだぁ!わっはっはぁー!」と大笑い。ドキドキする場面で彼がなぜか笑ってしまうのが毎度の事である。(このことを「あの時笑ってましたよね?」とあとで留学生に突っ込まれるのだが。)

ふと横を見るとマイウェイ君が竿を持って横にいる。キャストする気か?この状況が分かってないのか?「竿を下げないと踏まれるぞ」と、一応冗談っぽく注意する。

ここで留学生の叫び、「リールに水かけてもらえますかっ!」先輩が対応。スプールが過熱したのに焦ったのだろう。もとから傷んでいたかもだがもうグローブはボロボロであった。ここでワタクシiPhoneの動画のスタートが押しきれてないことに気づき慌てて撮影開始。(動画は未公開です)

ラインを出すスピードが落ちてきた巨魚はゆっくりと左旋回を始めた。これを見て北側の磯へ飛び移り駆け上がる留学生。これができないとサワラ根では(いやどこでもだが)巨魚は取れない。ついに船着場まで移動した留学生。サポートの我らは足場周りのものを急ぎ片付ける。「これはギャフが2つ必要になる日がついに来たかも。」と、先輩。「(そんな日を想定していつもギャフを複数持ってきてます。巨魚を移動させたり救助などで使う太いロープ持参してます)」、と思うワタクシ。右に左に重く泳ぐ巨魚。左後ろに立ち動画を撮りつつもしもの事態に備える。南側のエッジに擦りそうになるが留学生冷静に魚を止める。しかし体力限界が近い留学生。励ます我々。時折経過時間を告げる。ファイト中に声を掛けるのはファイトしている釣り人に冷静な状態を保って欲しいため。巨魚相手のファイトはかなりしんどい。しかし最も幸せな時間でもある。この時間を求めて釣り人は長い旅をしてくるのだ。

「留学生、楽しいなぁ!これをやりに来たんだもんな!」とワタクシ。「はい!楽しいです!これをやりに来たんです!」と留学生。

この時点でファイト開始から17分は超えていた。ここで巨魚も最後の勝負に北側のキワに向かって泳ぎだした。まだ魚の正体はわからない。リーダーが根ずれする。最後の勝負所。留学生島で覚えたラインコントロールして対処。声を掛け根にラインが当たる角度を修正してもらう。マイウェイ君何をしているかわかってない様子。一応解説しておく。魚が根から外れた。そしてこの危機を乗り切り渾身のリフトをかける留学生。力つきる巨魚。リーダーがリールに入る。ふらふらと沖にラインが流れたかと思うとボコンと浮き上がった。勝負アリ。全員が雄叫びをあげる!「イソンボだ!デケェー!」姿を見るまではGTかもと話していたが規格外にデカイイソマグロだったのだ。「これをやりに来たんですよ!!」とほっとしたような歓喜のような声で言う留学生。


ここで先輩がギャフ掛け。珍しくギャフ掛けが緊張すると話していたが、掛けた魚が重すぎる。引き波で逆に海に落ちそうになる。撮影をやめ急ぎ2本目のギャフを打つ。これをマイウェイ君に持ってもらいロープを取りに。皆で魚を引き上げこの間に魚を回しエラにロープを通して確保。三人がかりで引き上げた。完全に引き上げきれない。ともかく歓声が上がり皆留学生と握手。

本当に死闘だった。

イソマグロ
撮影13:54

まさに磯師の夢の魚。これを追っているのだ。祝福の気持ちとやられた!という気持ちで複雑な思い。

彼は背は若干高めだが大男でも筋骨隆々の力自慢ではない。逆にそういうものに自信をもって慢心していたらこの魚は捕れなかっただろう。体力はもちろん必要だが焦っても負けてしまう。経験を積み学び考え感じ取り対応しタイミングを逃さない。磯大物釣りは難しいな。

磯
船から1枚

さあ船に移して港で測定だが持って磯を移動するのは困難。まず渡船からブイを持ってきてブイと強いロープに変えて持って船に行き、そこから船長とワタクシ二人で引き上げた。船長もデカさに少し驚いている。14時過ぎ。さあ磯上がり。留学生はこの後仕事である。

磯
万感の思いだろう、留学生とサワラ根。
船
皆虚脱。

ルアー
掛かりどころも絶妙だった。もう少し飲まれたら歯切れだし口先ならもっと手強かっただろう。
イソマグロ
リボンテープにて測定
はかり

192センチ、72.5キロ。磯で釣れたサイズとしては日本記録クラスだろうし世界的にも上位に入るサイズである。

イソマグロ
作法持ちは無理だ


海
沖でリリース

そしてこの魚は海に返した。キャッチ時点でリリースは不可能だったしイソマグロを食べる習慣はこの島にはない。測量後港外に出て海に返した。大物釣りとはこういうことなのだ。

そしてこのエリアだとあっという間にデカい鮫に食われてしまうことだろう。このクラスの魚を一口で半分以上食らう鮫が南の海にはいるのだ。(だから大物釣りをしている磯で落水するのは危険なのだ)

間違いなく沢山の運が重なっただろう。しかしあの魚とのファイトは運だけでは釣れないことはこの磯で釣りをしたことのある釣り人ならわかってもらえるだろう。(磯大物釣り釣りにとって)未公認ながら歴史的な1日だった。

離島の友

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小笠原母島遠征

Posted by Kamaji